イランから帰ってきた。通常1ヶ月程度の旅行でも十分に耐えられる2KBのメモリーカードが最後には一杯になって泣く泣く削除せねばならないはめになるほど、「その一瞬」を捉えたい衝動に苛まれるようなペルシア建築美術の美しさと、何よりも人々の生の美しさが、この“クウェート”に帰って来た私に取り付いて、ため息をつかせる。「Incredible!ndia」が小悪魔的な魅力を持っているとしたら、イランは安らぎの詩的な悠久のロマンに満ち溢れているといえるだろう。当初は出会った人々、招き入れてくれた家族、恐ろしく美しい、デジカメの画素数よりも細かそうなペルシア建築美術の写真らをこれまでのように厳選してアップしようかと思ったが、この少女の笑顔、立ち方で、もうこれ以上、何か言う必要はないような気がした。(ネット状況が常に芳しくなくて写真のアップが面倒くさいというプラクティカルな側面は置いておいて)
以下、イスファハーンの喫茶店に居座ってでチャイをおかわりしながら書いた話。
比類なき、この独自性。どんなものとも異なっています。私たちは違うのだと臆せず断言するあなたに地続きの「根(ルーツ)」が、ほらここにも張っているじゃないかと嬉しそうに迫ってみながら、「そうかもしれません」なんて逃げられたときには、originalityなんてクソ食らえだよな、と目に涙を浮かべて。
すぐにcanを使うなよ。どこにそんな自信があるんだよ。できるできると並べてso what?お前はできないことを数える勇気も能力もないくせに。できないことを直視するのは全体の見取り図(非売品)が必要。
あなたは分かっていない、あなたは知らない、知らないだろう、と、何を根拠に?مثقف(教養、知識人。ثقافةが「文化」)なら絶対口にしない物言いに、やや立腹して、人の振り見て我が振り―――しようなんて言っているお前よ。謙虚さが一番、誠実さが最も、と言い聞かせるお前よ。まだ分からないか。naïveなのはどっちかと。超越などできないものだよ。
君の勇気に感服だよ。底抜けのboldnessに、ああ、何も言えないよ。originalityやidentityを全否定されても両脚で立って生きていける強さが欲しいって。それを強さと言っていいかな。どこにhomeを持たなくても、作らなくても、その存在1本で。無理かな、いやね、何を言われても、微笑んでいられる寛容さ、多様性の前に跪く挫折経験が要るよね。
「公園」が「市場(商店街)」がいかに大切か。公的領域がね。ほら、そこにあるベンチが空いているよ。暇してる人が話しかけてくる。どうだい、それだけで、生きていけるだろう、君。publicに語る空間が必要なんだ。(約1年前にシリアのボスラのローマ劇場で捲っていたアレントの『人間の条件』を、今度はイランで読むと、また違った実感を伴うような気がする)
綴りが違うことほど、文法が違うことほど、learner(学習者)の立場以外で、恥もしないのが私には信じられないんだ。だってobviousすぎるじゃないか。憎いな、慎ましやかに生きて行こうよ。
(機内)
中東の仏語と称されるペルシア語の快く気だるい感じの、慎ましさという一線を心得ている“ペルシア人”たちの織り成す、悠久の、雄大な、静かな笑顔が作り出す一種のハーモニーから一転、湾岸のシャルジャからクウェート行きに乗り換える際にはもう、オイルマネーにびちゃびちゃに浸りながらも、もはやそこにはフスハー(فصحى)の惚れ惚れするような美しさは毛頭なく、湾岸特有の獣のようなعやغが強調された発音で、さながら小学校の修学旅行のバスの中のような厚かましく、無教養に頭スカスカに「bold」としか形容しようのない脂肪男や、本来そういった方向で「美しさ」を競うfieldではないはずのアバヤにキンキラのビーズをブランドメーカーに模った黒い巨体女たちの身から染み出る軽薄さと、theの付く“アラブアラブしさ”に、隣に座る出稼ぎインド人労働者も(おそらく)「辟易」を通り越した、諦念の境地で、しかし軽蔑ともとれないかな、彼らの下で奴隷化されるやるせなさにじっと静かな瞳をたたえている。私は胃から込み上げて来るfed up with的気持ち悪さに、機内でこうして一筆啓上せずにはいられないおぞましさをぶつけて、というか書きなだねているわけだ。ペルシア文化への全力の共感を押し留めて、また、私はクウェートという「国」に帰っていく。
(着陸後)
とはいえ、慣れとは実に恐ろしいもので、空港を出れば、帰って来たのだな感。そしてそこには私服姿のワシントンからのアメリカ軍御一行。これが私の今のセカンドホーム・クウェート!
From Feb.7th to 27th, I will be travelling around Cyprus, Lebanon, Syria, Jordan and Israel. See you until then!
Saturday, February 7, 2009
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