『現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義』(池内恵、講談社現代新書、2002) Contemporary Arab Social Thoughts, eschatology and Islamism, Ikeuchi Satoshi,2002
この著者にはいろいろ批判も向けられるし、もちろん私もallマンセーではないが、かなりの若き秀英であることは世の中一致しているはず。1967年を皮切りにアラブ世界の(ほとんどが著者の専門であるエジプト限定なのだが)知的営みがどん詰まりの袋小路に嵌っていく過程の行き着く先が、日本赤軍やマルクス主義、共産主義とも絡めて描かれ、「どぎつい際物出版物」が地で行くオカルト陰謀論とともに、どうしようもないと言いたくなるような閉塞感と痛々しいまでの絶望感である。それを育てたのは"われわれ"世界だと言われれば身も蓋もないけれど、この思考の貧しさはどこから来て、どこまで行ってしまうのだろうか。
シリアに逃れてきていたバグダッド大学の政治学の教授は、とても開明的で教養のあるおじさまだった。しかし、シリアの友達は哀しくなるほど凝り固まっている(”敬虔な”とは褒め言葉になりうるのだろうか)。トルコの友達は賢いし、それほどではないが、やはりそこから抜け出られない感じがする(抜け出る必要もないけれど)。何を信じようと自由だが、だからこそ宗教の限界と可能性に思いを馳せてしまう。
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