Thursday, July 31, 2008

苦悩するアフリカ

《Shackled Africa》

『アフリカ 苦悩する大陸』(ロバート・ゲスト、東洋経済新報社、2008.5)The Shackled Continent: Africa's Past, Present and Future, Robert Guest, 2004

"shackled"とは「足かせを嵌められた」という意味。アフリカ各国の現状を「エコノミスト」“欧米”ジャーナリストの視点から、極めて現実的にしかし悲観も楽観もせずに、期待は失わない筆致で具体的な事例をもとに紹介し、いかにしてアフリカは発展することが可能か、自身の日本の知識をもとに追求する。なぜ日本は発展し、アフリカはいつまで経っても発展できないのか----という幼子でも抱く素朴な疑問。しかし、誰も明確には答えられない。複数の要因が複合的に重なり合い、しかも評者の立場が問われる。非アフリカ人なら、アフリカの権力者の異常なまでもの権力志向や腐敗、言ってみればグダグダ政府にその要因を少しでも求めれば、(サヨクからも)植民地主義者と強烈な非難を浴びるし、アフリカ人の政治家たちは口を開けば援助、援助・・・しかしその行き先は、nobody knows. この非生産的な袋小路を打破するには?

著者の提案で注目すべきは2点。

著者は明日の食べ物に困る人たちにとっては、まず搾取のグローバリゼーションとしての貿易が必要なのだと提案する。搾取されることよりも、まず相手にされないことのほうが問題だ、と。リカードの「比較優位」の話を持ち出す。そんなに事態は単純なのかと疑いたくもなるが、確かに一理あるのかも知れない。ある人々(搾取!暴力!ポストコロニアル!と叫びたい人たち)にとっては超モンダイ発言だが、一考には価する。

アフリカには「信用」が存在しないため、ビジネスが成立しない。不動産の所有権を確立して、財産法や相続法を整備すること。不動産を担保に資金を借り入れることを容易にする。先進国では当たり前のことがいかに整っていないか。民法でマルト(=登記)と当然のようにノートを取ることの偶然性のようなものに、打ちのめされそうになる。

あとはありがちだが、「民主化」と脱中央集権化、部族意識の改善(「保護者=庇護者」という構図)。アフリカ権力者の権力志向はアフリカに特有のものかどうか?強固な部族意識は本当に植民地支配の産物なのか?その部族意識はアフガニスタンのそれと異なるか?どのように?部族意識の改善が難しければ、ナイジェリアのイジョ族とイツェキリ族の対立に苦慮する官僚がナイーヴに言うように「マイノリティがいない、均質な行政区を作る」ことなんて可能なのだろうか?もしくはそれしか方法がないのだろうか?ボスニアで、どう頑張っても民族ごとに色分けすることができなかったこと、そのたびの血が流れたことを考えると気の遠くなる作業だけれど・・・今後調べよう。

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伊藤 真

東洋経済新報社 2008-05
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