Thursday, September 4, 2008

私は私だし

カルチャーショック ハーバードvs東大─アメリカ奨学生のみた大学教育─カルチャーショック ハーバードvs東大─アメリカ奨学生のみた大学教育─
ベンジャミン・トバクマン

大学教育出版 2008-08-12
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西洋法制史の試験が思い通りに書けず落胆し、行政法は切るのだけれどそのまま帰るのも癪だから書籍部でこれを立ち読み、読了したら、ますます嫌な気分になって、寝不足も手伝って若くないことを実感し、気づけば帰って17時から次の朝9時まで寝ていたという私です。西洋法制史の「西洋」が初め、変換で「静養」と出てしまって、もう笑うしかありません。

勉強を今からしようと思っていた小学生が親に指摘されるとむかつくような、空気の読めない男に俺様トークされると虫唾が走るような、目の前にいる人間が私の苦しみを全く分かっていないことにため息をつくような、そんな感情に陥ってしまう本書。つまり、ハーバードの学生に"今更"東大のシステムやら日本の教育制度の欠陥を批判されても、そんなのこっちはとっくに分かってて、でもどうしようもなくて、日本を脱出するわけにもいかず、それならと仕方なく(?)日本のトップであると言われる東大に来ているキレ者って多いはずなんだよな。解決・改善しようのない分かっていることについて、何度も言われてきたようなことを指摘されると、日本で生まれ育って教育を受けてきたお前なんか失敗作だ、欠陥品だ、クズだ、と改めて言われているような被害妄想に浸ってしまいがちなのも無理はないと思う。

うちは特に依然として「帝國大學」であって、必ずしもuniversityではないのだろう。アメリカの大学は3年で卒業できるのに、なぜ東大の法学部は半分近くの人が留年しなければ卒業できないの?なぜ東大の先生はあんなにふんぞり返っているの?アメリカでは学生は消費者であって、授業はサービスだから、面白くて分かりやすくなければ先生の力不足なんだ。東大に来て初めてこんなに授業中寝ている学生を見たetc・・・もちろん、改善できるものならして欲しい点は山ほどある。日本とアメリカは違うんだといって終わりにしたくもない。それでも、それでも、それでも――!!!それでも違いすぎるこの2国を同列に扱うのも相当に無理があるように思われてならない。

例えば、著者は大学関係者に言ったそうだ。東大も、こんな入試は止めてアメリカみたいにボランティアの経験etcを評価すれば?そうしたらもっと多様で社会に役立つ学生が入ってくる、と。あのねぇ、日本にはボランティアなんていう文化はないの。カタカナで書いている外来語なの。最近は浸透してきているかも知れないけど、本当にボランティアが好きなアメリカ人の足元にも及ばない。だから、安倍元首相が訳の分からない"(義務としての)奉仕活動"とか言ってたでしょ?まだまだ輸入概念なの。

私がアメリカで育てられていたら、英語に近いヨーロッパ言語は今頃とっくにいくつかマスターしているだろうし、他の外国語にしてもメソッドが向こうはうまいからもっとコストなしで使えるようになっていただろう。これくらいの頭があって、ああいうアメリカの入試制度(SATなんて年に6回もやってるんだぜ)なら、間違いなくトップスクールに入って大学内の寮に入って遠距離通学に悩まされることもなく、24時間開館の図書館で勉強して楽しく大学生活を謳歌し、もっと言えばアメリカにはatopieは存在しないし、こんな陰気臭いことでぐじぐじ悩むような、しかも「一生悩み続けるような人間でいたい」なんていう、ニッチな人間にはなっていなかっただろうよ。でもね、私は日本で生まれ育ってしまったの!

と微笑ましくも憤慨しながら1時間帰りの電車に揺られていたら、地元に着くころには、これが私だし、まぁ仕方ないなんて、ケロッとしていた。所詮そんな程度である。

こんな学生の異文化交流記どまりの本が出せるなんて、日本の出版業界もまだまだいけるのかもね。

ああ、そういえばこのブログのタイトルも、日本語で言えば、「私は私だし」になるのかな。この「だし」がポイント。

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