Friday, August 8, 2008

第六感


8月6、9日の重さはもはやいくら重い重いと言っても言い尽くせない、重すぎる日である。8月6日がどうしてこんなに暑いどころではなく、熱いのか、この日の広島の異様な雰囲気は行ってみた者でないと分からない。ヒロシマをどう扱う(deal/cope with)か、その現場でどんな感傷に浸るかは、まさしくその者の知的成熟度が問われる。

今晩NHKで特集していたジョー・オダネル(Joe O'Donnell)は高校の英語の教科書に出てくるほど有名だけれど、彼が50回もの手術を重ねた老体に鞭打ち、全米からの非難を受け、奥さんと離婚してまで(のち、日本人と再婚)、原爆後数十年経ってから開けたトランクの写真に向き合った経緯は知らなかった。現在は、息子は遺志を受け継いでいる。今でもおそらく、アメリカで原爆についてアメリカの教科書の主張以外のことを言うのは本当に難しいだろう。映画『靖国』が右翼その他の妨害で多くの映画館が上映を取りやめた際に、日本にはデモクラシーがないのかと嘆いた論調が多かったが、その意味でアメリカにそのデモクラシーがあるかというと、あるとはなかなか言い切れない面が拭えないはずだ。まだ退役軍人(veterans)が存命であるうちは、特に。それほど、63年前の出来事は、血の通った生々しい近しいものなのに。

原爆に翻弄されたアメリカ人がここにもいたということ。反戦でも、非戦でも、サヨクでも左翼でもなんでもない。正しい戦争があるかどうか難しい議論じゃない。ただ単に、これはまずいだろうという感情。何かが違うという第六感。人を突き動かすのは結局そこなのだと。研ぎ澄ませ、己の第六感。

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